作: リチャード・カリノスキー
翻訳: 浦辺千鶴
演出: 栗山民也
出演: 眞島秀和、岸井ゆきの、久保酎吉、升水柚希
観劇日: 2019年12月15日(日) 13:00
上演時間: 第1部(60分) / 休憩(15分) / 第2部(70分)
劇場: 紀伊國屋ホール
チケット代: 8,800円(C列) [パンフレット代:1,200円]
【感想】
オスマン帝国におけるアルメニア人虐殺を背景とした、とても重いテーマ。
でも、焦点はそこではなく、そんな過去を持つ男女が家族を築き上げていく物語でした。
第一次世界大戦の終戦から3年後のアメリカ・ミルウォーキーが舞台。
アメリカへ亡命し、写真屋を営んでいるアルメニア人のアラム(眞島秀和さん)は、施設から送られてきた写真だけで選んだ同じアルメニア人の孤児・セタ(岸井ゆきのさん)を妻として迎えます。
きれいな家に住めると大喜びのセタ。
しかしそこには、奇妙な家族写真(アラムの顔だけが貼られ、残り4人の顔は切り抜かれている)が飾ってありました。
セタはまだ15歳。
子供を作ろうと迫るアラムでしたが……。
老紳士(久保酎吉さん)がストーリーテラーとして登場し、時代背景などを説明してくれるので、予備知識がなくても大丈夫です(「月の獣」が何を意味するのかも)。
この老紳士の正体はいずれ明かされるので、ここでは内緒のままで。
第一幕では、アラムのモラハラっぷりが目について、いやーな感じが満載です。
でも、アラムにも何か胸に秘めているものがあるように受け取れます。
ここら辺の眞島秀和さんの演技がとてもうまかった。
一方、セタの方は、岸井ゆきのさんが童顔なので、15歳という年齢で連れてこられた彼女が、余計に可哀想に見えてしまいます。
最初の幼くて無邪気な感じから、後半、年月が過ぎて、大人の女性になった時の演じ分けもなかなかのものでした。
そんなに嫌なら離婚すれば……と普通なら思うところですが、家族も亡くし(虐殺され)、故郷もないセタにとっては、アラムのもとで生きていくしかなかったんでしょう。
それでも次第に近くなっていく二人。しかし子供はできません。
第二幕では、セタが路上生活をしていた少年・ヴィンセント(升水柚希くん)を、アラムに黙って家にあげ、一悶着も二悶着もあります。
そして、クライマックスで語られるアラムの過去……。
奇妙な家族写真を大切に飾っていた訳、父のコートでふざけていたヴィンセントに激怒した理由……それらが分かり始めると涙が溢れてきます。
家族を亡くし、辛い過去を背負った3人が、幸せに生きていくことを願わずにはいられないラストでした。