白昼夢

作・演出: 赤堀雅秋
出演: 三宅弘城、吉岡里帆、荒川良々、赤堀雅秋、風間杜夫
観劇日: 2021年3月24日(水) 13:00
上演時間: 1時間35分(休憩なし)
劇場: 本多劇場
チケット代: 7,500円(B列:最前列) [パンフレット代:1,000円]


【感想】

赤堀雅秋さんの舞台は、やっぱし面白い!
今回も、様々な問題を抱えた”愛すべきダメ人間・小市民”の生き様に目が離せませんでした。

12年間、自宅に引きこもっている47歳の薫(荒川良々さん)。
妻に先立たれた父親(風間杜夫さん)との二人暮らしです。
結婚して家庭のある兄の治(三宅弘城さん)は別に暮らしていますが、この状況を何とかしようと、支援団体の別府(赤堀雅秋さん)と石井(吉岡里帆さん)に協力を仰ぎますが……。

いわゆる「8050問題」です。
舞台は、家のリビング・ダイニングの1シチュエーション。
赤堀さんの舞台ではお馴染みのスナックシーンは、今回はありません(喫煙シーンはチョコチョコ)。
このセットで、夏・秋・冬・春の移ろい(それぞれの変わり目で暗転)を描いていくという構成です。

「8050問題」というと、この場合、主に薫(荒川良々さん)に原因がありそうですが(まあ実際そうですが)、それ以外の人たちも多かれ少なかれ闇を抱えていて……。

特に、吉岡里帆さん演じる石井
周りに気を使って、明るく振る舞おうとしている感じが健気でもあり、可哀想でもあり。
無理して作っているかのような笑顔が、観ているこちらをも不安定な気分にさせてきます。

風間杜夫さん演じる父親は、すぐにカッとなって怒鳴るような人。
その着火がいつ起きるのか分からないので、平穏な場面でも、ずっとどこかに緊張感が漂っていました。
でも、薫のことを心底愛している(こういう表現が合っているかどうか分かりませんが)のが分かるシーンもあります。

大きな出来事があるようでないような、そんな話が続くんですが、その中で印象に残ったのが、薫(荒川良々さん)が夜中にゴキブリと出くわしたというエピソードを、別府(赤堀雅秋さん)や石井(吉岡里帆さん)に聞かせるくだり。
珍しく機嫌よく話していた途中で、兄の三宅弘城さんが帰ってきます。
話は、ちょうどクライマックスで、まさにオチに入ろうかというところ。
腰を折られ、急速にテンションが下がっていく、あの何とも言えない微妙な空気感が、とてもリアルでした。
その間の悪さみたいなのが、この家族の関係性を象徴しているかのようにも思えます。

ちょっと暗くなりがちなテーマではありながら、チラシにも書かれている「それでも生きて行く。喜劇。」とあるように、少し笑えて、少し前向きになれる、そんな舞台でした。