2つの「ヒ」キゲキ
2つの「ヒ」キゲキ

脚本・演出: 矢島弘一(パンティーアナキズム)、水野美紀(テクタイト)
出演: 水野美紀、和田雅成、剛力彩芽、富田翔、真凜、椎名鯛造、宮下貴浩、福田ユミ、水原ゆき、南部麻衣、竹内真里、久保田武人、西野優希、永松文太、猪俣利成、中原果南、竹若元博
観劇日: 2021年10月9日(土) 12:00
上演時間: 第1部(1時間5分) / 休憩(15分) / 第2部(1時間20分)
劇場: 新国立劇場 小劇場
チケット代: S席 12,000円(C1列) [パンフレット代:3,300円]


【感想】

水野美紀さん脚本・演出・出演とあっては、「プロペラ犬」ファンとして、観逃せません。
この舞台、二話(二幕)構成で、一話目が『パンティーアナキズム』(作:矢島弘一)、二話目が『テクタイト』(作:水野美紀)となっています。
二つは全く違う話ですが、扱っているテーマは同じで、登場人物なんかもゆるーくつながっているという仕掛けです。

《パンティーアナキズム》
高校でいじめにあっている桜子(剛力彩芽さん)。
ある日、担任の小田島先生(水野美紀さん)は、桜子がいじめにあっている現場に出くわします。
その場で、主犯格である明日香(真凜さん)を追い詰めますが、その日の帰りに彼女は自殺してしまい……。

いじめ、SNS、支配、DV、家族などなど、様々な問題がちりばめられています。
序盤は、結構、深刻(悲劇的)に進んでいく物語ですが、明日香が自殺してからは桜子に運気が回ってきて、笑える(喜劇的)場面が多くなります(明日香が死んだことを喜んでいるわけではなく)。
支配されたくないともがく桜子は、一体、何から逃れようとしていたのか?
剛力彩芽さんのイライラ感が、真に迫った演技でした。

《テクタイト》
主演舞台の千秋楽を迎えた俳優・タクト(和田雅成さん)。
しかし、彼が幼少の頃、彼の父親が村祭りでカレーに毒を入れ、死刑になった犯人だったいうことがスクープされ……。

こちらは、劇中劇の要素もあって。
だから、幕間のセットチェンジの後、スタッフがステージを掃除してるなと思ってみていたら、あれっ?スタッフじゃない、キャストじゃん!みたいな演出も。

テーマは、第一話と同様、SNSとかDVとか支配とか……最近よくある「過去のスキャンダルや過ちを暴かれて(本人だけでなく家族も含む)糾弾される」みたいな風潮にも怒ってるんだろうなあ、みたいなことが感じ取れます。

前半は、演劇ファン(タクトのファン)である小田島軍団が笑わせてくれますが、徐々にタクトの生い立ちや、それが原因で多重人格になったことがわかってくるとシリアスな展開に。
でも、クライマックスでは、またまた小田島軍団が掻き回しての大団円。
演劇あるある(舞台上で切られても、一旦はけたら生き返ってもいいルールとか)を笑いに変えるなんてところは、いかにも「プロペラ犬」的な匂いがして、水野美紀さんの笑いのセンスも健在でした。

第一話も第二話も、ともにタイトル通り「悲」と「喜」が折り重なって、たくさんの要素を盛り込んでいるのに、不思議と消化不良が少なく、プラマイゼロのちょうどいい重さの話でした。
ちなみに、「テクタイト」って、隕石衝突によって作られる天然ガラスのことらしいです。
生きていれば、色んな人や事に衝突して、でも、そこからキラキラした美しいものもできて……みたいなことなんでしょうか。


※ 余談
チケットは、カンフェティでゲットしたんですが、キャスト別で申し込むようになっていて(例えば、水野美紀:1枚みたいな)。
キャスト名は、チケットにも印字されてたんですが、あれって何の意味があったんでしょうか?謎です。