パ・ラパパンパン

パ・ラパパンパン

演出: 松尾スズキ
作: 藤本有紀
出演: 松たか子、神木隆之介、大東俊介、皆川猿時、早見あかり、小松和重、菅原永二、村杉蝉之介、宍戸美和公、少路勇介、川嶋由莉、片岡正二郎、オクイシュージ、筒井真理子、坂井真紀、小日向文世
観劇日: 2021年11月17日(水) 13:00
上演時間: 第1部(1時間20分) / 休憩(20分) / 第2部(1時間30分)
劇場: シアターコクーン
チケット代: S席 11,000円(N列) [パンフレット代:1,800円]


【感想】

松尾スズキさんの舞台って、面白いんだけど、毒が強いのも多くて、毎回、観ようかどうしようか迷ってしまいます。
結局、観るんだけど。

鳴かず飛ばずの小説家・てまり(松たか子さん)は、次回作に本格ミステリーを書こうとしています。
しかし、ミステリーの書き方がわからないため、担当編集者・浅見鏡太郎(神木隆之介さん)からダメ出しをくらってばかり。
最終的に、チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』の世界を舞台にした物語を書きあげますが……。

あれっ?松尾スズキさんにしては、まともな、いや素直なストーリーと思ったら、脚本は違ったんですね。
しかも、藤本有紀さんって、今期朝ドラの『カムカムエヴリバディ』を書いてらっしゃる方。
道理でいつもとは少し違うなと思いました。

オープニングなんか、プロジェクションマッピングを使った登場人物紹介で、ケラさん?って感じもしたし。
でも、皆川猿時さんを初めとした笑いの演出は、松尾スズキさんっぽかったですね(あれは猿時さんのオリジナリティか)。

松さんは、ああいうテンポのいい掛け合いが本当にうまい!面白い!
『大豆田とわ子と三人の元夫』や古くは『HERO』でのキムタクとの掛け合いを彷彿とさせます。
それに、美声も聴かせてくれましたし。

タイトルの『パ・ラパパンパン』って、何のこっちゃ?と思ってましたが、『リトル・ドラマー・ボーイ』のあのフレーズ(歌詞)だったんですね。
多分、誰もが知っている曲。終演後も、ずっと頭の中で鳴り響いてました。

キャスト全員が一癖も二癖もある役なんですが、中でも特筆すべきは、ティム役の川嶋由莉さん
なかなかのコメディエンヌっぷりで、気に入ってしまいました。

物語の方は、てまり(松さん)の書く小説が、そのまま舞台で繰り広げられる劇中劇で進められます。
私は、その基となっている『クリスマス・キャロル』を知らなかったので(あらすじみたいのは劇中でも説明がありますが)、もし知っていたら、もっと細かいことにも気づけたかもしれません。

途中、犯人を誰にするかと悩むてまり(松さん)が、一番犯人らしくない人にしようとすると、編集者(神木さん)が、「そういうアプローチが一番いけない。動機を基準に考えるべきだ」と諭すシーンがあるんですけど、まさにその通り!と一人で膝を打ちました。
某有名プロデューサーが企画した某TVドラマで、視聴者の予想を裏切りたいだけの結末にガッカリするのは、てまりと同じアプローチをしてしまったからなんでしょうね。

とはいうものの、この舞台(劇中劇)の結末が、納得いったかというと、個人的には微妙。
まあ、そこが本筋ではないのでいいんですが。

もしかしたら、おそらくは、「運不運を嘆くな」みたいなテーマがあったかもしれないんですが、それ以上に楽しさの方が勝った舞台でした。


※ 開演前の注意アナウンスは松尾スズキさんが担当。
途中、拍手を半強制する部分があります(この回は、皆さんそれに応えてました)。
こういうウォーミングアップ、いいですよね。