世界は笑う

世界は笑う

作・演出: ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演: 瀬戸康史、千葉雄大、勝地涼、伊藤沙莉、松雪泰子、大倉孝二、緒川たまき、銀粉蝶、山内圭哉、マギー、犬山イヌコ、温水洋一、山西惇、ラサール石井、伊勢志摩、廣川三憲、神谷圭介
観劇日: 2022年8月23日(火) 13:00
上演時間: 第1部(2時間5分) / 休憩(20分) / 第2部(1時間20分)
劇場: シアターコクーン
チケット代: S席 11,000円(2階A列) [パンフレット代:2,000円]


【感想】

上演時間が、20分の休憩を含んで3時間45分という長丁場。
劇団☆新感線も長いですが、ケラさんも毎回長いですよね 笑。
これがツマラなけりゃ拷問ですが、あっという間に時間が過ぎていくんだから流石です。

昭和32年の東京・新宿。
戦後から10年以上経ち、もはや戦後ではないと言われ、高度経済成長を迎えつつある日本ですが、主に喜劇を上演している三角座では、ストリップの勢いに押され、客足が遠のき始めています。
米田彦造(瀬戸康史さん)は、三角座の若手俳優である弟の有谷是也[あれやこれや](千葉雄大さん)から、劇団のスタッフとして雇ってもらえることになり上京しますが、道に迷ってしまい……。

ケラさん作にしては珍しく、ファンタジー的要素は全くなくて
一応の主役は瀬戸康史さんですが、誰かにフィーチャーしているわけでもない"ザ・群像劇"といった感じの芝居でした。

今回、久しぶりにコクーンの2階席(でもS席)だったんですが、舞台全体を俯瞰するように観られたのは、この群像劇にはあっていたかもしれません(と負け惜しみ 笑)。
オープニングのプロジェクションマッピングも、中2階や2階席の腰壁にも投影されているのが、満遍なく見えて綺麗だったし(と負け惜しみ 笑)。

一幕目は三角座の劇場が、二幕目は遠征先の長野の旅館が舞台となって物語が展開します。
前半は喜劇多め、後半になるほど悲劇が散りばめられていきます。

時代としては、昭和生まれの私でも、さすがにこの頃はまだ生まれてないので(生まれる少し前なので)、よく知りません。
でも、お笑い芸人が憧れの職業になったのってつい最近ですし、おそらくこの時代の喜劇役者は、待遇的にもかなりシンドかったんじゃないかっていうのは想像に難くありません。
テレビ放送の黎明期っていうのも大きな要因でしょうね。
笑いにかける情熱は……一概に今と比べることはできませんが、自分が面白いと思うことと、観客が笑うことが必ずしも一致しないというジレンマみたいなのは、それほど変わらないのかもしれません。
だから、有谷是也(千葉雄大さん)が、一旦は立ち直ったヒロポン中毒に再び溺れてしまったのは、観ているこちらも辛くなりました。

悲喜こもごものエピソードが次々と繰り広げられ、悲劇的な結末を迎えますが、エピローグではその後が描かれます。
プロローグでは上京したての米田彦造(瀬戸康史さん)が道に迷いますが、エピローグでは道に迷ったカップルが登場して米田彦造に道を尋ねます。
わかりにくい地図のせいで、なかなか目的地に辿り着けない二人に「地図に頼るんじゃなくて、目的地を言えば、知っている誰かに出会えるかも」とアドバイスする米田彦造。
人生になぞらえた、ケラさんにしてはどストレートなメッセージでしたね。
でも、そのおかげで、少しほっこりした気分で終わることができました。

とてもわかりやすいお話でしたが、長野の旅館でテレビ局のプロデューサー(ラサール石井さん)が肩を刺される(おそらく緒川たまきさんに)くだりだけが、ちょっと「???」だったかな。