作・演出: ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演: 井上芳雄、緒川たまき、ともさかりえ、松尾諭、安澤千草、菅原永二、清水葉月、富田望生、尾方宣久、森準人、石住昭彦、三宅弘城、三上市朗、萩原聖人
観劇日: 2022年11月30日(水) 13:00
上演時間: 第1部(1時間45分)/休憩(15分)/第2部(1時間30分)
劇場: 本多劇場
チケット代: 8,500円(M列) [パンフレット代:1,900円]
【感想】
昭和10年頃の梟島。
波子(緒川たまきさん)の夫の七回忌に、妹の千夏(ともさかりえさん)を始め、親戚や知り合いたちが集まってきます。
そんな中、陸に上げられた船の中から、怪我をした見知らぬ男性(井上芳雄さん)が現れますが、彼は記憶を失って、自分が誰なのかもわからず……。
梟島は、『キネマと恋人』の舞台になった架空の島。
あの可愛らしい方言(これまた架空の)を聴いてるだけで、もうニコニコしちゃいます。
物語的には『キネマと恋人』とは全く関係ありませんが、登場人物がやたらと映画を観に行ったりして、やっぱりこの島の娯楽の中心は映画なんだなと、つながりを感じさせてくれます。
記憶喪失の男・フジオ(井上芳雄さん)の正体を巡って話が進むのかと思いきや、さすがケラさん、そんな定番の展開にはせず、ただただ島に暮らす人々の何気ない出来事を紡いでいきます。
それが、変にミステリーじみてなくて良かったですね。
文吉(萩原聖人さん)&千夏(ともさかりえさん)の夫婦、波子(緒川たまきさん)&富子(富田望生さん)の母娘、万作(菅原永二さん)&やよい(清水葉月さん)の兄妹など、キーとなる関係がうまいこと散りばめられているので、登場人物は多いんですが、そんなにゴチャゴチャ感はありませんでした。
この舞台のテーマの一つに「記憶(過去)」があるんでしょう。
記憶喪失の男の他にも、波子の義父(石住昭彦さん)が、一幕の終わりで認知症になってしまいます。
私も経験ありますが、息子[波子からしたら義兄](三上市朗さん)にとっては、とてもショックなこと。
でも、終盤では「いまが幸せならば、それでいいじゃない」といった結論に収束してくれるところが、元気をもらえる感じで。
過去の過ちには「ごめんちゃい」。そして、今の状況に「ありがとさん」。
劇中で多用されるこの2つの言葉が、幸せに暮らしていくための秘訣なんだと気づかせてくれます。
緒川たまきさん、今回もまたチャーミングで、本当にこの方言がピッタリ。
富田望生さんの泣き方が可愛らしくて最高。
松尾諭さんの名医っぷりも良かったし、三宅弘城さんの一途な感じも好感が持てました。
ともさかりえさんのコミカルなボディランゲージや、萩原聖人さんのいい加減さも"らしく"て笑ってしまいます。
そして、井上芳雄さん、ストプレに徹するかと思ったら、最後の最後で……やっぱし歌わないと気が済まないんですかね(本人の?演出家の?)。
今回もばりんこ面白かっただり〜。