綿子はもつれる

綿子はもつれる

作・演出: 加藤拓也
出演: 安達祐実、平原テツ、鈴木勝大、田村健太郎、秋元龍太朗、天野はな、佐藤ケイ
観劇日: 2023年5月17日(水) 19:00 ※初日
上演時間: 100分(休憩なし)
劇場: 東京芸術劇場 シアターイースト
チケット代: 4,500円(前半割引:G列) [パンフレットなし]


【感想】

加藤拓也さんの舞台。
また嫌な気分になるんだろうなと分かっていながら、やはり気になって観にきてしまいました。

妻子ある男性(鈴木勝大さん)と不倫をしている綿子(安達祐実さん)は、男性が帰った後、ホテルの部屋から交通事故を目撃します。
家に帰っても、夫・悟(平原テツさん)との夫婦関係はほぼほぼ破綻しており、中学生になる夫の連れ子(田村健太郎さん)とは、いまだに距離がある状態で……。

今回も期待を裏切らず、何とも言えない嫌〜な気分にさせてもらいました 笑。

嫌な気分になる理由 その1
半分くらいがギスギスした夫婦間(安達祐実さんと平原テツさん)の会話。
悟は関係を修復しようとアレコレ話しかけますが、それが我々から観ても、とてもウザったい。
テンション低い時は、そっとしといてやれよと思っちゃいます。
それでいて、急に喧嘩を吹っかけるようなことを話し出したり、理屈で綿子を追い詰めようとしたり。
人の口論って、しかも噛み合わない口論って、ほんと嫌な気分になります。
まあ、それだけ安達祐実さんと平原テツさんの演技がリアルってことになるんでしょうが。
時折、会話がかぶってしまうのも、あれって演出通りなんだろうな。

嫌な気分になる理由 その2
シーンの繋ぎ目に入る耳障りなノイズ音。
ザリザリというノイズ音が、場面転換の時に流れます。
会話劇なので、耳をそばだてて集中している時に、大きめの音量で不意打ちされるので、毎回ビクッとさせられます
過去の作品でも大きなアラーム音を流したり、本物の軽トラを登場させて、思い切りクラクションを鳴らしたりといった演出がありましたが、加藤拓也さんって、音で驚かすのが好きなのかな。

嫌な気分になる理由 その3
エンディングの演出。
ネタバレになるので、ちょっと言えませんが。
これも加藤拓也さんが多用する手法の一つ。
オープニングでの事件が、ここで繋がってくるといった種明かし的な要素も含んでいました。
でも、この種明かしで、あの時の綿子の心情は……と思い返したりして。

そんな中、息子(田村健太郎さん)とその同級生(秋元龍太朗さん、天野はなさん)のシーンは、一息つける時間で。
息子は晩御飯も外で済ませてくるような生活で、親もそれに対して何も言わない、放任とか無干渉というより"無関心"のように扱われていますが、それでもグレてはいないんですよね。
親がいない時、友達を家にあげて、我々からすると他愛もない(どうでもいい)話で盛り上がったりします。
親の不仲もとうに気づいていて、なんか悟り切った感じ。
ただ、やはり中学生には見えなかったかな 笑。

天野はなさんは、かなり健闘していましたが。
天野はなさん、いいですよね。舞台ではちょくちょくお見かけしますが、地味だけど(すみません)不思議な魅力があって。
かと言って、出過ぎることもなくて、ちょうどいい存在感を醸し出しています。ちょっと黒木華さんに雰囲気が近いような。

さて、舞台は、この上ない後味の悪さで終わります。
これが加藤拓也さんの持ち味でもありますが、好き嫌いがハッキリ分かれるでしょうね。
教訓めいたメッセージも何もありませんでしたが(私が受け取れなかっただけかもしれませんが)、やっぱ次回作も観ちゃうんだろうな。