みんな我が子

作: アーサー・ミラー
演出: リンゼイ・ポズナー
翻訳: 広田敦郎
出演: 堤真一、森田剛、西野七瀬、大東駿介、伊藤蘭、山崎一、栗田桃子、金子岳憲、穴田有里、鳴海竜明
観劇日: 2022年5月11日(水) 13:30
上演時間: 1幕(1時間) / 休憩(20分) / 2・3幕(1時間25分)
劇場: シアターコクーン
チケット代: S席 11,000円(F列) [パンフレット代:1,800円]


【感想】

タイトルだけ見ると(チラシの写真も)、アットホームで明るい話なのかなと思ってしまいますが、全く違っていて。

第二次世界大戦中、戦闘機の部品などを作る工場を経営していたジョー(堤真一さん)。
その時の特需で、今は裕福な暮らしをしていますが、妻のケイト(伊藤蘭さん)とともに、いまだ戦争から戻らない次男の帰りを待っています。
ある日、長男のクリス(森田剛さん)は、次男の婚約者であったアン(西野七瀬さん)に結婚を申し込もうと家に招きますが、そこにアンの兄・ジョージ(大東駿介さん)が現れ、戦争中に起きた両家の秘密について話し始め……。

1幕の最初の方は、まだ状況が掴めない上に翻訳モノ特有の台詞回しが頭に入ってこず。
加えて、近くのおばさんが、何やらビニル袋をくしゃくしゃやる音が耳障りで(本人は何とか静かにやろうとしているのでしょうが)、なかなか集中できませんでした。
しかし、話が戦争中に起きた不良品隠蔽のことに至ると、物語がぐんぐん加速して、おばさんのゴソゴソ音も気にならなくなるくらい(いや気にしとるがな)。

特に2幕から登場する大東駿介さんが、台風の目になって、舞台を一気に緊張状態に持っていきます。
真実を問いただそうと鬼気迫る様子で登場しますが、ケイト(伊藤蘭さん)やジョー(堤真一さん)に会うと、以前からの付き合いもあるため、怒りを押し殺して対応してしまうみたいな感情の機微が見事でした。

森田剛さんは、最近は荒くれた役が多い印象(私だけ?)がありましたが、クリスはなかなかアンに告白できない恥ずかしがりの性格で。
そう言えば、髭のないお顔を拝見したのも久しぶりかも

堤真一さん、伊藤蘭さんらは、さすがの存在感でしたが、西野七瀬さんがなかなかの好演!
若干たどたどしさが残っているところもありましたが、滑舌もいいし声も通るし、演技も変に気負ってないし(前回拝見したのは新感線の『月影花之丞大逆転』でしたが)、とても好感が持てました。

70年以上も前の作品ですが、現代でも通じる内容で、色々と考えさせられる話でしたが、ラストは…………この日の朝、上島竜兵さんの訃報を知ったばかりだったので……やりきれなさが残るエンディングでした。