やっぱし舞台が好き!

芝居、ミュージカル、バレエ、ダンス、クラシック、コンサートなどの舞台観賞が大好きです。 観劇の個人的な感想をつらつらと書いてます。 たまに、ちょっとした体験談や気になったことも・・・。

赤堀雅秋

【観劇】ボイラーマン

ボイラーマン

作・演出: 赤堀雅秋
出演: 田中哲司、安達祐実、でんでん、村岡希美、水澤紳吾、樋口日奈、薬丸翔、井上向日葵、赤堀雅秋
観劇日: 2024年3月7日(木) 18:00 ※初日
上演時間: 2時間5分(休憩なし)
劇場: 本多劇場
チケット代: 8,500円(B列) [パンフレット代:2,000円]


【感想】

赤堀さんの作品って、アウトローとか身近でちょっと危ない人なんかが登場するのが特徴。
チラシの印象だと、常連の田中哲司さんを中心に、今回もそんな世界が描かれるのかと思いましたが……。

甲州街道に程近い住宅街の路地裏。
雑居ビルのようなアパートの横に階段があり、その脇には電話ボックスがある、どこにでもあるような光景です。
時刻は夜の10時過ぎ。
喪服を着た女性(安達祐実さん)が何かを探しています。
そこにコートを着た男性(田中哲司さん)が現れ、女性は立ち去ります。
男性はおもむろに煙草をふかし始めますが、アパートから出てきた女性(村岡希美さん)に咎められます。
女性がアパートに戻ると、今度は警官(赤堀雅秋さん)がやってきて男性に職質をかけます。
最近、近辺で不審火が連続しているらしく……。

こんな感じで、色んな人がこの路地に入れ替わり立ち替わり登場して織りなす一晩の物語です。
ここから先はネタバレになりますので、ご注意を。


-------- 以下、ネタバレ --------------------

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【観劇】蜘蛛の巣城

蜘蛛の巣城 蜘蛛の巣城

原脚本: 黒澤明、小國英雄、橋本忍、菊島隆三
脚本: 齋藤雅文
上演台本: 齋藤雅文、赤堀雅秋
演出: 赤堀雅秋
出演: 早乙女太一、倉科カナ、中島歩、長塚圭史、久保酎吉、赤堀雅秋、銀粉蝶、佐藤直子、山本浩司、水澤紳吾、西本竜樹、永岡佑、新名基浩、清水優、川畑和雄、新井郁、井上向日葵、小林諒音、相田真滉、松川大祐、村中龍人、荒井天吾/田中誠人(Wキャスト)
観劇日: 2023年3月5日(日) 13:00
上演時間: 2時間15分(休憩なし)
劇場: KAAT 神奈川芸術劇場 ホール
チケット代: S席 8,500円(13列) [パンフレット代:1,800円]


【感想】

赤堀雅秋さん演出なので、『蜘蛛の巣城』というタイトルでも、現代劇なんだろうなと思ってチケットを取りましたが、ガッツリ時代劇でした 笑。
しかも、元は黒澤明監督の映画と知ってビックリ。
しかも、マクベスを下敷きにしていると知って、更にビックリ。
いやあ全然知りませんでした 恥。
そんな作品を赤堀さんが、どのように演出するのか?逆に楽しみになってきました。

世は戦国時代。
蜘蛛の巣城の一の砦の大将・鷲津武時(早乙女太一さん)と二の砦の大将・三木義昭(中島歩さん)は、攻め込んできた細川家の大軍を激しい戦いの末、見事に退けてしまいます。
しかし、戦いの後、二人が森の中をさまよっている時、もののけ(銀粉蝶さん)から予言めいたことを告げられます。
その予言を信じ武時と妻の浅茅(倉科カナさん)は……。

つまり、武時(早乙女太一さん)がマクベスで、浅茅(倉科カナさん)がマクベス夫人、三木義昭(中島歩さん)がバンクォーってわけですね。
魔女は3人じゃなくて、銀粉蝶さん1人だけでしたが。

設定を時代劇にしただけで、マクベスがグッと身近に感じられます
『NINAGAWA・マクベス』も日本に舞台を置き換えてますが、蜷川さんの方は文学的なのに対し、『蜘蛛の巣城』は大衆娯楽って感じでしょうか。
ただ、笑うようなシーンはほとんどなく(数箇所だけクスッとするところはありましたが)、シリアスな場面が2時間15分のノンストップで続きます。
でも、集中力が途切れるような感じはしませんでしたね。
いつもの赤堀雅秋さんの色が、いい意味で抑えられていて、とても観やすかったです。

早乙女太一さんと倉科カナさんが中心となって、物語は進んでいきますが、このお二人の表情の変化が素晴らしくて。
最初は主君に忠誠を誓う、爽やかな大将といったイメージの早乙女太一さんが、予言を遂行していくうちに、どんどん狂気じみていく様は見事。
残念ながら、華麗な殺陣のシーンはほとんどなかったですが、義昭の幻覚(亡霊?)に切り付けるところなんかは、まるで本当に義昭のカラダを刀がすり抜けてしまったかのように見えて。
がむしゃらに刀を振っているようで、義昭に当たるか当たらないかのギリギリを通しているあたりは、やはり凄いですね。
倉科カナさんも、揚げひばりを優しく見上げている姿から、何かに取り憑かれたかのように武時を焚き付けていくといった変わりようには、鬼気迫るものがありました。

まあ、基本、マクベス通りに進んでいきますが、最後はちょっと違っていて。
ここから先は、ネタバレになるかもしれないので、念のため、ご注意を。


------- 以下、ネタバレ ----------


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【観劇】パラダイス

パラダイス

パラダイス

作・演出: 赤堀雅秋
出演: 丸山隆平、八嶋智人、毎熊克哉、水澤紳吾、小野花梨、永田崇人、梅沢昌代、坂井真紀、西岡德馬、飯田あさと、碓井将大、櫻井健人、前田聖太、松澤匠、赤堀雅秋
観劇日: 2022年10月17日(月) 13:30
上演時間: 2時間(休憩なし)
劇場: シアターコクーン
チケット代: S席 11,000円(L列) [パンフレット代:2,000円]


【感想】

一昨年(2020年)、コロナのせいで中止になった舞台がようやく開幕です。
あの時もチケットを取れていたのに、泣く泣く払い戻しをしましたっけ。
丸ちゃん人気で、女性が多いだろうなと覚悟していましたが、意外と男性客も多くて。

振込め詐欺グループのリーダー・梶(丸山隆平さん)は、借金を返せなくなった若者を集めて"新人教育"をしています。
そろそろ独立をと考えていますが、上役の辺見(八嶋智人さん)は穏やかに話すも、梶の家族情報を調べ上げて、それとなく脅しをかけてきます。
気になった梶は、久しぶりに実家に帰りますが、そこにはギスギスした空気が流れており……。

舞台は、遅刻した新人をタコ殴りにしている丸山さん(梶)のシーンから始まります。
アウトローの丸山さんです。外見は、ちょっとオシャレなチンピラって感じ。
手下の毎熊克哉さん(真鍋)の方が見た目には怖いですが、やってることは丸山さんの方が無茶苦茶です。
「俺に謝ってもしょうがないだろ」とか「(これはただの暴力じゃなくて)お祓いみたいなもん」というロジックを持ち出したり。
周りで見ている新人の中には、謝られても「俺は受け入れられない。こいつまた同じこと繰り返しますよ」と変におもねる奴がいたり。
ブラック企業の構図と同じで(詐欺グループなんでブラックですが)、冒頭から嫌な気分にさせられます。

その後のボーリング場のシーンでは、八嶋智人さんや水澤紳吾さんも登場し、彼らの微妙なパワーバランスも垣間見えます。
人の良さそうな顔をしながら、時折、有無を言わせぬ口調で釘を刺す八嶋さん。やはり上手いです。
そして、八嶋さんの付き人(ボディガード?)に水澤紳吾さん
最近のテレビドラマ(『私の家政夫ナギサさん』や『恋はDeepに』など)では"良い人"役も多くなってきましたが、やはりこの舞台みたいな"危ない"役の方がピッタリきますよね。

登場人物は、この詐欺グループと梶の実家しか出てこなくて、つまり被害者は描かれません。
掛け子の新人の中には、小野花梨さん(望月)がいます。
詳しい経緯は語られませんが、風俗嬢まで身を落としながら、それでも借金が返せず、ここに流れ着いたらしく、もう後がないという状況。
なので、他の誰よりも電話をかけるのに必死です。
だから、初めて"カモ"を引っ掛けるのに成功した時は、少し涙ぐんでいて。
観ているこちらも、「頑張ったなぁ、良かったなぁ」なんて気持ちに……いやいや悪いこととは重々承知しながらも、徹底的に加害者側の視点で描かれると、そういう錯覚にも陥ってしまって。
ちょっと違うけど、動物ドキュメンタリーなんかで、ライオン視点で描かれると、シマウマを倒した時に「やった」と思ってしまうのと似ています(まあこっちは、どちらも自然の摂理で"悪"じゃないけど)。

さて、詐欺グループでは不穏な雰囲気の丸山さんですが、実家では別にグレた風でもなく、意外と普通に振る舞っています。
でも、この家族がギスギスしていて、居心地悪いのなんのって。
離婚して戻ってきている姉に坂井真紀さん
どこかにクレームの電話をしてるんですが、それがしつこくって。
言ってることは多分正論なんでしょうが、容赦がありません。
父親役に西岡德馬さん母親役に梅沢昌代さん
二人とも、坂井真紀さんの作ったカレーをすぐに食べてくれません。
そういう日常にイライラしている坂井真紀さんの心情、わかります。
そして、そんな光景を諦めにも似た表情で、傍観者のように佇んでいる丸山さん
おそらく、こんな空気が嫌で、家を出て行ったんだろうなというのが、伝わってきます。
"親ガチャ"って言葉がありますが、"家ガチャ"とでも言ったらいいんでしょうか。
だから、梶が「生まれながらに"罰"を受けて生きている」という言葉に共感し、世間に(裕福な家庭に)復讐するといった思考に行き着いたんだとわかります。
ところで、この実家、下手にダイニングキッチン、上手にリビングというレイアウトで、『白昼夢』にそっくりのセットでした。使い回しじゃないと思いますが 笑。

物語は最後、赤堀雅秋さんも加わって、破滅的な結末に向かっていきます。
こっちは『ケダモノ』に似たラストで、なかなかのカタストロフィっぷり。
唯一の救いは、『ケダモノ』と同様、若者(小野花梨さん)だけが助かること。
そんな悲劇的な物語なのに、タイトルは『パラダイス』。
どこが、誰にとっての"パラダイス"なのか?
色んな取り方ができて、考えさせられました。


※ 以前、このブログでも書きましたが、私は「ピストルの音が怖い」。
この舞台でもピストルが出てきますが、音はSEの「ズキューン」だったので、ホッとしました。
でも、最初に鳴るまではドキドキしましたが。

【観劇】ケダモノ

ケダモノ

作・演出: 赤堀雅秋
出演: 大森南朋、門脇麦、田中哲司、荒川良々、あめくみちこ、清水優、新井郁、赤堀雅秋
観劇日: 2022年4月26日(火) 13:00
上演時間: 1時間55分(休憩なし)
劇場: 本多劇場
チケット代: 7,800円(I列) [パンフレット代:1,500円]


【感想】

不良中年(赤堀雅秋さん、田中哲司さん、大森南朋さん)が集まって、コンプライアンスなんか無視してクズ男たちを描き切った舞台です。← 賞賛してます(笑)。

ある田舎でリサイクルショップを経営している手島(大森南朋さん)は、従業員の出口(荒川良々さん)と木村(清水優さん)、そして店に出入りする自称・映画プロデューサーのマルセル(田中哲司さん)らとつるんでキャバクラに行ったり、馬鹿話をする毎日です。
ある日、父親の遺品を整理したいとの依頼を受け、節子(あめくみちこさん)の家を訪れますが……。

登場する男どもが、揃いも揃ってクズで下品な野郎ばかり。
特に東京五輪でコンドームが配布されるというニュースについて話すくだりは、その国の人たちが聞いてたら気を悪くするだろうって内容です。

タバコをふかすシーンも多くて。
赤堀さんの舞台は、もとから喫煙シーンが多かったですが、今回はひっきりなしに誰かが吸ってる感じです。
結構、後方まで煙の匂いがしてたんじゃないかな。

何だか、テレビやSNSで憚れることをブワッと吐き出してやったぜって言ってるみたいです。
だから、もしかしたら、こういうのが嫌いという人も少なからずいるかもしれません(私は好きというわけではないですが、アリだとは思ってます)。

そんなクズたちの筆頭が出口(荒川良々さん)。
舞台で観てる分には笑えますが、実際にいたら、かなり危ない奴で一番怖い。
こういう危な面白い役を演らせたら、荒川良々さんはピカイチですよね(単純に面白い役もいいですが)。
それに惹かれちゃう節子(あめくみちこさん)の気持ちは、残念ながら、私にはわかりませんけど(笑)。

大森南朋さんも、『ちむどんどん』『私の家政夫ナギサさん』穏やかキャラは封印して、ちょいワルおやじ(とは言っても全然お洒落じゃないですが、個人的にはこっちの方がしっくりきます)を演じています。
やる気がなくて、気だるい雰囲気は、彼がどんな生き方をしてきたのかが透けて見えてくるようです。

いつもは一番の危険人物を演りそうな田中哲司さんが、怪しげではあるけれど、一番マトモだったかも。
それは、タバコはやめたと言って、劇中、一回も吸わなかったからかな?

門脇麦さんは、フィリピン人(母親)とのハーフのキャバ嬢として登場します。
DVの父親とか無戸籍とか、大変な事情を背負っている故の”諦めに対する閾値の低さ”みたいなのが滲み出ていて、そのへんは流石だなと思って観てました。
でも、いつかはパスポートを取得して(戸籍がないから闇で?)、母親の故郷へ行く夢を持っていて。

それが、最後の超悲劇的なカタストロフィの中での唯一の救いになったのかもしれません。



※ 舞台とは全然関係ないですが。
下北沢駅前の高架下が再開発されていてビックリ!
下北沢
本多劇場へ、直線でアプローチできるようになってました!
多くの飲食店やツタヤなんかが入っていて。まだこれからできるお店もあるみたい。
キレイなトイレもあって、下北沢へ行くと密かに悩んでいたトイレ問題も解決です。

【観劇】白昼夢

白昼夢

作・演出: 赤堀雅秋
出演: 三宅弘城、吉岡里帆、荒川良々、赤堀雅秋、風間杜夫
観劇日: 2021年3月24日(水) 13:00
上演時間: 1時間35分(休憩なし)
劇場: 本多劇場
チケット代: 7,500円(B列:最前列) [パンフレット代:1,000円]


【感想】

赤堀雅秋さんの舞台は、やっぱし面白い!
今回も、様々な問題を抱えた”愛すべきダメ人間・小市民”の生き様に目が離せませんでした。

12年間、自宅に引きこもっている47歳の薫(荒川良々さん)。
妻に先立たれた父親(風間杜夫さん)との二人暮らしです。
結婚して家庭のある兄の治(三宅弘城さん)は別に暮らしていますが、この状況を何とかしようと、支援団体の別府(赤堀雅秋さん)と石井(吉岡里帆さん)に協力を仰ぎますが……。

いわゆる「8050問題」です。
舞台は、家のリビング・ダイニングの1シチュエーション。
赤堀さんの舞台ではお馴染みのスナックシーンは、今回はありません(喫煙シーンはチョコチョコ)。
このセットで、夏・秋・冬・春の移ろい(それぞれの変わり目で暗転)を描いていくという構成です。

「8050問題」というと、この場合、主に薫(荒川良々さん)に原因がありそうですが(まあ実際そうですが)、それ以外の人たちも多かれ少なかれ闇を抱えていて……。

特に、吉岡里帆さん演じる石井
周りに気を使って、明るく振る舞おうとしている感じが健気でもあり、可哀想でもあり。
無理して作っているかのような笑顔が、観ているこちらをも不安定な気分にさせてきます。

風間杜夫さん演じる父親は、すぐにカッとなって怒鳴るような人。
その着火がいつ起きるのか分からないので、平穏な場面でも、ずっとどこかに緊張感が漂っていました。
でも、薫のことを心底愛している(こういう表現が合っているかどうか分かりませんが)のが分かるシーンもあります。

大きな出来事があるようでないような、そんな話が続くんですが、その中で印象に残ったのが、薫(荒川良々さん)が夜中にゴキブリと出くわしたというエピソードを、別府(赤堀雅秋さん)や石井(吉岡里帆さん)に聞かせるくだり。
珍しく機嫌よく話していた途中で、兄の三宅弘城さんが帰ってきます。
話は、ちょうどクライマックスで、まさにオチに入ろうかというところ。
腰を折られ、急速にテンションが下がっていく、あの何とも言えない微妙な空気感が、とてもリアルでした。
その間の悪さみたいなのが、この家族の関係性を象徴しているかのようにも思えます。

ちょっと暗くなりがちなテーマではありながら、チラシにも書かれている「それでも生きて行く。喜劇。」とあるように、少し笑えて、少し前向きになれる、そんな舞台でした。


写真AC
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「写真AC」

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※ 資料用としてアップしたものも多いので、「何じゃこりゃ」って写真も多々ありますが。
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